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台湾の風景~境界を超えて 仲間 浩一 氏

九州産業大学景観研究センター 景観セミナー/レクチャーシリーズ 2021年前期 第1回

テーマ:いま、台湾の風景にふれる

 

6月11日(金)18001930

台湾の風景~境界を超えて

仲間 浩一 氏

※ZOOMによる開催

 

【セミナー内容】

本日ご講演していただいた仲間浩一氏は、大学在学中にパリに留学し地理学を学ばれた。九州工業大学にて教鞭をとられた後に起業され、現在は台南應用科技大學の室内設計学科(インテリアデザイン系の学科)にて専技副教授(日本の准教授に相当)を務められている。セミナーは、現在お住まいの台南市を中心に歴史と現在の街並みの様子についてお話していただいた。

台湾の歴史はそれほど古くなく、1620 年代にオランダの東インド会社が拠点を築いて以降の約30年間のオランダ統治時代を経て、鄭成功(16241662,長崎県平戸市川内浦出身)による初の漢民族政権がとられた。オランダ統治時代につくられたゼーランディア城を安平城とし、政権の拠点とした。台南市には瓦盤塩田(割れた瓦を敷き詰め、そこに潅水し塩を作る)や養殖池(ゆうえん)が広く分布しており、伝統的な農業用地の風景を形成している。また、自然保護区となった湿地帯ではクロツラヘラサギの群れが観察できる。一方で、安平城の南側の新市街地は、1960年代は干潟と湿地、養殖池が広がっていたが、1980年代には干拓により格子状の市街地に変化し、現在は約2万人が住む市街地になっている。

台南では古い建物をリノベーションして活用する文化が発達しているとのことで、セミナーでは旧中国城のリノベーションである河楽広場や、1836年建設(清王朝後期)の信義街にあるデュイエ門が紹介された。また、リノベーション物件が多いエリアとして、清朝以来重要な河川港であった五篠港地区や、歴史的な五篠港地区とは好対照な雰囲気の蝸牛巷が紹介された。リノベーションが活発な背景に、行政支援等があるのかもしれないので、今後調べてみたいとのことであった。

最後に、「境界を超えて」というメッセージは示唆的であるが、オランダ統治時代から、様々な時代ごとに、境界や敷居を超えて、失ったり、新たに生み出したりを繰り返し、うまく重なりながら変化してきたことで今の台南の風景があるのではないか、という見解により締めくくられた。