12/15 (金) 18 : 00-19 : 30 景観セミナー/レクチャーシリーズ 2023 ,後期,第 3 回「地域産業振興に資する景観づくり ―長崎市景観専門監の取り組み―」,講師:高尾 忠志 さん 本日は、長崎市景観専門監である高尾忠志さんにご講演いただきました。高尾さんの講演からは、地方の元気を取り戻すために、地域のまちづくりに積極的に取り組む必要性が明確に伝えられました。特に、今や観光だけでなく、定住にも影響を及ぼす時代になっていることに気付かされました。 長崎市が施設更新の時期にあったことが、市の計画に反映しやすかった点は注目に値します。他方、企業誘致だけでは経済効果が期待できないとの指摘は重要で、スモールビジネスの育成や地域経済循環のアプローチが不可欠であることが示されました。このようなアプローチが、現代の高次欲求やエシカルな欲求を満たす社会に適した方法であるのではないかということでした。 個人的に印象に残った事例は、出島夜市の事例です。この事例は、長崎ならではの景観を生み出す市民団体の協力によって成り立っており、地域の特性を活かした成功事例であると言えます。このようなスポットが増えれば、地域内での交流が促進され、交流の産業化に寄与する可能性が高まります。地域産業振興に資する景観づくりは、地域の魅力を最大限に活用し、地域全体の成長に不可欠な要素となるということを考えさせられました。 景観研究センター 大庭
12/1(金)18:00-19:30 景観セミナー/レクチャーシリーズ2023,後期,第2回「福岡の成長とまちづくりの課題 」,講師:坂井猛さん 九州大学教授の坂井猛氏にご講演いただきました。セミナーでは、まず景観を議論する前に、重要な前提があることが強調されました。それは、 SDGs (持続可能な開発目標)に景観や風景美しさが明示的に含まれていないことから、景観は豊かな国の問題であるという事実です。また、アジア圏諸国でも景観への意識が高まっていることが触れられ、国際的な視野からのまちづくりの重要性が認識されました。 特に、天神ビッグバンの提案については、個々の建物が着実に進行しているものの、全体像を俯瞰してどのように見えるかの確認が必要であるとの指摘がありました。高さ制限の緩和が予想以上にまちづくりに影響を及ぼす可能性が議論され、慎重な取り組みが必要であることが示されました。 また、九州大学の伊都キャンパスへの移転に際しては、地元の箱崎への影響を調査し、歴史的価値のある建物や庭園を保護する取り組みが進行中であることが伝えられました。移転後、近隣の飲食店等についての心配があったものの、営業を続ける場所と新たに生まれる場所があることが報告され、地域への配慮が示されました。 また、セミナーを通じて、大きなプロジェクトが将来的に次々と更新時期を迎えることは課題として明らかになりました。これらの取り組みにおいては、個々の建物やプランだけでなく、総合的な視点を持ち、まち全体の発展と景観の保全を考える必要があることが強調されました。今後のまちづくりに向けての示唆に富んだセミナーであったと感じました。 景観研究センター 大庭