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投稿

京の庭づくりと雨庭の可能性 和田貴子氏

  京都の植彌加藤造園株式会社の和田貴子氏に雨庭についてご講演いただきました。和田氏は、自然文化サービス部のスタッフであり、「京都の自然文化の伝承」のための庭園の調査・研究、活用事業に取り組まれています。 渉成園のお話では、生物多様性について触れられました。攪乱依存種であり希少種のミズアオイが印月池の畔で発見され、 13 年ぶりの開花確認ということでメディアにも取り上げられたとのこと。また、雨庭の事例紹介では、京都市の取り組みや、会社として設計・監理・広報資料作成に携わった「京都御苑間之町口」の雨庭整備をご紹介いただきました。京都市では、平成 29 年に初めて雨庭を設置して以降、現在は街中にスポット的にあるそうで、京都の景観に馴染んだ道路脇の雨庭が印象的でした。 私は、雨庭を実際に見たことがまだないのですが、豪雨時の雨庭の時間経過の写真から、貯めて浸透させる構造が機能していることをお示しいただき、その効果に驚きました。質疑応答では、雨庭の維持管理が今後の課題の一つであるとお話しされており、地域住民で景観的にも機能的にも素晴らしい雨庭を管理していける仕組みづくりについて考えてみたいと感じました。 文責:大 庭知子
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流域治水とグリーンインフラ -多自然川づくりを超えて 佐藤辰郎氏

  冒頭の自己紹介では、ふるさと宮崎県での子供時代のお話や、実際に起きた土砂災害での経験から得たグリーンインフラへの思いなどをお話いただきました。 中盤では、グリーンインフラの背景である、気候の変動について、「地球は人間により温暖化してきており、温暖化によって豪雨が増えていることが科学的に説明されている」ということ、そのことが人間社会(政治)にも影響し、人々の幸せが奪われてしまうことへの懸念などが、問題提起されました。 実際に佐藤氏がかかわった流域治水の事例として、神代川と球磨川のお話がありました。また、個人的に印象深かったのは、人工の川を自然にもどす方法である「近自然河川工法( Re Vitalization )」についてのお話でした。川の個性(河相)を頼りに、川に川をつくらせるということで(年月をかけ、人工的に整備された河川を可能な限り自然に近い、元の流域に近づけながら治水していく。)、その検証方法として、河川の模型を製作し、実際に水を流し、ハンマーで護岸を壊しながら水の流れなどを確認していく、という説明がありました。私としては解析ソフト等を主に使用し検討していくのだろうと思っていたので大変驚いたと同時に、人工的に整備しても流域の歴史を覚えていることに自然の力強さを感じました。 最後に、決して「グレーインフラ  VS  グリーンインフラではない」というメッセージが伝えられ、自然と人工のバランスの重要性が示唆されました。   文責:大庭知子

英国の産業景観を探る 岡田昌彰氏

  九州産業大学景観研究センター 景観セミナー/レクチャーシリーズ  2021 年後期 第3回 テーマ: Perspectives from Russia, US and UK in the midst of a global pandemic   12 月 24 日(金) 18 : 00 - 19 : 30 英国の産業景観を探る 岡田昌彰氏   【セミナー内容】 本日ご講演していただいた 岡田昌彰 氏は (近畿大学 理工学部 社会環境工学科 教授) 、テクノスケープ(産業景観)がご専門であり、近代化によって生まれた工業景観についてご研究されている。セミナーでは、英国のテクノスケープについて、工場や運搬橋、鉄道、風車などの産業景観が人々に親しまれている事例が紹介された。 事例の紹介では、現役のものやコンバージョンされたもの、観光地となっているもの、雑貨などのデザインに取り込まれているものなど、人々の生活に産業景観が溶け込んでいる様子が伺えた。元ツイード製造工場( ブリス・ツイード・ミル)を活用した高級マンションは、郊外にあり立地利便性は低いものの人気が高く、即時完売であった。 ディドコット発電所(石炭火力発電所、 1968 年竣工)は、二酸化炭素排出量が EU の基準に合わないため解体されたが、解体を惜しむ人が多く、なかにはタトゥーをいれる人もいる。他にも、軍事遺産で結婚式を挙げる光景や、バターシ―発電所が絵葉書やアクセサリーになっている。また、中には最初から廃墟としてつくられた人工廃墟(フォリー)もあるということである。工業風景が日常生活の溶け込んでおり、イギリスが産業風景に誇りを持っているということが推察される。 日本に縁のある事例も紹介していただいた。フォース鉄道橋( 1890 年竣工)はスコットランド紙幣にも描かれている、最も有名な橋のひとつであり現在も使用されている。台風対策のため台形フォルムで設計されており装飾は無い。紙幣には、当時建設に携わった日本人の渡邊嘉一氏が印刷されている。渡邊氏は帰国後に日本土木学会設立にも参画した人物である。 また、共用水道と日本の関係についての調査結果が大変興味深かった。共用水道は、住民が飲料水を求めると同時に井戸端会議も行われる場所である。共用水道は東インド会社寄付によってつくら

人と自然が織りなすー500万人都市サンフランシスコの風景とまちづくり 細垣 彩加 氏

  九州産業大学景観研究センター 景観セミナー/レクチャーシリーズ  2021 年後期 第2回 テーマ : Perspectives from Russia, US and UK in the midst of a global pandemic   12 月 10 日(金) 18 : 00 - 19 : 30 人と自然が織りなすー 500 万人都市サンフランシスコの風景とまちづくり 細垣 彩加 氏   【セミナー内容】 本日ご講演していただいた細垣彩加氏( Office ma ランドスケープアーキテクト)は、 京都大学で野生動物と鳥類の関係を研究された後、 アメリカの大学でランドスケープデザインを学ばれた。サンフランシスコには 8 年ご在住である。セミナーでは、サンフランシスコの気候や歴史、市民参加型のまちづくりなどについてご講演いただいた。  サンフランシスコは地中海性気候のため寒くても 10 ℃程度で日本の3~5月頃の気候が続き、霧のまちとしても有名である。それほど大きなまちではなく、坂道とケーブルカーが特徴的なまちなみを形成している。シリコンバレーにはアップルなどの IT 企業のオフィスが多数あり、多人種多様のまちである。パークレットなどのオープンスペースが多く、ベンチや植栽がまちなかに点在し、人々がストリートで楽しんでいる風景がみられる。  一方で、道路渋滞や物価の高騰などが深刻である。渋滞対策としては、ウーバーや電動自転車、スクータなどのレンタル業が盛んである。住宅賃料の高騰(1ベッドルーム 40 万円弱)は深刻でキャンピングカー生活者もいるほどである。現在は、アフォーダブルハウジング計画が進められている。 セミナー後半では、サンフランシスコの歴史についてお話していただいた。移民の町からの発展であり、サンフランシスコへの名称変更以降はゴールドラッシュによる人口増加により、ケーブルカーやゴールデンゲートパーク、ゴールデンゲートブリッジの建設により街並みが形成されていった。太平洋戦争で造船場がつくられ、当時集まった技術が元となり現在の IT 業に発展している。環境への意識も高く、 CEQA などの環境影響評価法やパブリックヒアリングによりプロジェクトを進めている。 まちづくりや環境問題に対する市民の意識が高く、

ロシアの街並みと風土:モスクワを中心に 山本 真紗子 氏

  九州産業大学景観研究センター 景観セミナー/レクチャーシリーズ  2021 年後期 第1回 テーマ: Perspectives from Russia, US and UK in the midst of a global pandemic   11 月 5 日(金) 18 : 00 - 19 : 30 ロシアの街並みと風土:モスクワを中心に 山本 真紗子 氏   【セミナー要約】 本日ご講演いただいた山本真紗子氏(慶應義塾大学非常勤講師、エコロジカル・デモクラシー財団アドバイザー)は、イギリスのナショナル・トラストがご専門であり、モスクワご在住である。セミナーでは、専門家の視点から捉えた、モスクワの街並みと風土についてお話していただいた。 モスクワ市は東京都と同レベルの面積と人口密度である。また、民族構成は、ロシア人 80 %の他、タタール人、ウクライナ人など他民族で構成され、アジア人も多く過ごしやすい環境である。夏は短く日が長く心地よいが、冬はとても長く日が短く暗いという気候であるが、冬には美しい景観が現れる。 ここ 10 年で大幅な都市改造が進むが、歴史的建造物も多く現存する(世界遺産3件、連邦指定 118 件、登録 1512 件)。 EV や自転車のシェアリングなど環境配慮が積極的であり、公園や歩行者専用道路など多くのオープンスペースの整備が政府主導により急スピードで進んでいる。一方、一時期に大量供給されたプレハブ構造の大規模集合住宅の老朽化・陳腐化に伴う管理等が都市問題の一つとして指摘される。 トップダウンにより進めてきた都市整備により、公園やオープンスペースの数と高い質が特徴であり、非常に歩きやすいまちである。世界からは賛否両論の評価を受けるモスクワだが、政府主導で美しいまちがつくられていることは間違いなく、今後どのような都市に成熟していくのだろうか、今その分岐点に立っている。市民の声をくみ取るしかけが特徴的であり、政府主導でまちの問題を挙げる掲示板サイトを開設している(登録者数は市民人口の 10 %)。今後は市民の声をまとめ反映し進めていく方法を模索していくだろう。 記録:大庭知子

臺南の風景にみる日本 梶原 宏之 氏

  九州産業大学景観研究センター 景観セミナー/レクチャーシリーズ  2021 年前期 第3回 テーマ:いま、台湾の風景にふれる   7月 23 日(金) 18 : 00 - 19 : 30 臺南の風景にみる日本 梶原 宏之 氏 ※ZOOMでの開催   【セミナー内容】 本日ご講演していただいた梶原宏之氏は、熊本県阿蘇市にて博物館学芸員を 20 年間勤められた後、4年前より台南応用科技大學助理教授として教鞭をとられている。セミナーでは、ご自宅周辺の風景について、日本統治時代の建物を中心にご講演いただいた。 日本統治時代の建物は、神社と郵便局以外はほぼ残されている。台南測候所は国定古蹟であり、日本人が最初に来てつくったものの一つである。日本ではあまり見かけない正十八角形の棟は、その見た目から胡椒菅と呼ばれていたそうで、当時の日本人が様々なデザインを試みていた様子がうかがえる。また、対面にはイギリス人が布教を目的に建設した太平境教会がみえる。台湾に上陸してはじめに、日本人は科学的データを集めようとしたのに対し、イギリス人は布教活動をしており、それぞれの目的が象徴的に存在した空間となり大変興味深い。 また、日本人は、人々が集う場所を比較的初期に作っている。台南公館は公民館であり、討論会や映画上映会などが開催されていた。柳下屋は、公民館で議論する人達が食事をする場所であったが、現在は「十八卯(うさぎ)」というカフェになっている。店名は、「柳」の漢字を分解してつけている。 食文化の捉え方については日本とは少し異なる部分があり、日本は食文化が文化財になっているものはないが、中華文化では非物質文化遺産が多いことが特徴であり、街の風景に溶け込んでいるとのことである。 その他にも多くの事例をご紹介いただいた。日本統治時代の文化をリノベーションしている様子はよくみかけるとのことで、日本統治時代を歴史のレイヤーとして受け止めている様子が街並みからうかがえる。 記録:大庭知子(九産大)     

クロツラヘラサギがつなぐ湿地の風景 高久 ゆう 氏

  九州産業大学景観研究センター 景観セミナー/レクチャーシリーズ  2021 年前期 第2回 テーマ:いま、台湾の風景にふれる   7月2日(金) 18 : 00 - 19 : 30 クロツラヘラサギがつなぐ湿地の風景 高久 ゆう 氏   【セミナー内容】 本日ご講演していただいた高久ゆう氏は、福島県のご出身である。現在は、東京工業大学大学院の学生であると同時に Team SPOON 副代表を務めておられる。セミナーは、 Team SPOON での活動内容や、クロツラヘラサギが越冬する台南の湿地が抱える社会的課題等についてご講演いただいた。 台湾の南西に多くの湿地が広がっており、その中の一つの布袋(ブダイ)の湿地では養殖池が多くあり、冬に水を少し抜き水位を下げたときに、クロツラヘラサギや渡り鳥が残った魚を食べている。養殖池は、オランダ統治時代に導入されており、 300 年以上の歴史を持つとのことである。 現在、世界各地でグリーンコンフリクトが問題になっていることにも言及された。世界と同じく、台湾でのグリーンコンフリクトも始まったばかりとのことである。 台湾は原子力を段階的に廃止し、再生可能エネルギーからの電力供給量比率を 20 %とする方針を 2016 年に発表した。しかし、代替エネルギーである太陽光発電の計画地の多くは、少し埋め立てれば広大な平地が得られる湿地であり、クロツラヘラサギの生息地が失われることが危惧される。クロツラヘラサギの他にも多くの生態系が存在しており、代替エネルギーによる環境問題が深刻な状況であることが示された。 また、近年のグリーンコンフリクトは、従来の対大企業の大規模開発とは性質が違なり対個人地主であることから、交渉手段を模索中とのことであった。高久氏ご本人は福島原発事故当時に高校生だったこともあり、今、クリーンエネルギ―と自然の共存について考えておられるとのことであった。 副代表を務めている Team SPOON は、東アジアを中心に展開しており会員は約 450 名である。メンバーの指輪とクロツラヘラサギの足輪のデザインをそろえることで繋がりを表現している。また、クロツラヘラサギに関する子どもワークショップを韓国や台湾で開催し、クロツラヘラサギをとおした国際交流も実現しているとのことであ