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ロシアの街並みと風土:モスクワを中心に 山本 真紗子 氏

 

九州産業大学景観研究センター 景観セミナー/レクチャーシリーズ 2021年後期 第1回

テーマ:Perspectives from Russia, US and UK in the midst of a global pandemic

 

115日(金)18001930

ロシアの街並みと風土:モスクワを中心に

山本 真紗子 氏

 

【セミナー要約】

本日ご講演いただいた山本真紗子氏(慶應義塾大学非常勤講師、エコロジカル・デモクラシー財団アドバイザー)は、イギリスのナショナル・トラストがご専門であり、モスクワご在住である。セミナーでは、専門家の視点から捉えた、モスクワの街並みと風土についてお話していただいた。

モスクワ市は東京都と同レベルの面積と人口密度である。また、民族構成は、ロシア人80%の他、タタール人、ウクライナ人など他民族で構成され、アジア人も多く過ごしやすい環境である。夏は短く日が長く心地よいが、冬はとても長く日が短く暗いという気候であるが、冬には美しい景観が現れる。

ここ10年で大幅な都市改造が進むが、歴史的建造物も多く現存する(世界遺産3件、連邦指定118件、登録1512件)。EVや自転車のシェアリングなど環境配慮が積極的であり、公園や歩行者専用道路など多くのオープンスペースの整備が政府主導により急スピードで進んでいる。一方、一時期に大量供給されたプレハブ構造の大規模集合住宅の老朽化・陳腐化に伴う管理等が都市問題の一つとして指摘される。

トップダウンにより進めてきた都市整備により、公園やオープンスペースの数と高い質が特徴であり、非常に歩きやすいまちである。世界からは賛否両論の評価を受けるモスクワだが、政府主導で美しいまちがつくられていることは間違いなく、今後どのような都市に成熟していくのだろうか、今その分岐点に立っている。市民の声をくみ取るしかけが特徴的であり、政府主導でまちの問題を挙げる掲示板サイトを開設している(登録者数は市民人口の10%)。今後は市民の声をまとめ反映し進めていく方法を模索していくだろう。

記録:大庭知子