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野の草花と文化的景観

 

6/7(金)1800-1930 景観セミナー/レクチャーシリーズ2024,前期,生物/文化の多様性と景観 第1回


本日は、内田泰三氏(九州産業大学 建築都市工学部 教授)に『野の草花と文化的景観』というテーマで、熊本県阿蘇での取り組みについてご講演いただきました。

 

日本最大規模を誇る阿蘇の草原は、ススキやネザサが主体の半自然草地であり、その美しい景観は馬の放牧や採草、野焼きなどの生業に支えられ成り立っています。採草によって他種が侵入する機会が創出されることは、生物多様性に影響し、人間の風習や文化にも深くかかわっています。「地域の一生態系が支えられている」というお言葉が特に印象的でした。

 

外国産外来種の問題についてもお話がありました。近年の調査で、道路法面に外国産外来種のヨモギやススキ、コマツナギが植えられていることが判明したとのことです。地域が異なれば遺伝子が異なる可能性が高く、遺伝子かく乱を引き起こす可能性があることが指摘されました。さらに、昨今の法面は外来型の牧草が使われているため、鹿の給餌場となり、結果的に道路法面の崩壊を招き、人間に命の危険を及ぼす可能性があることも話され、これが大きな課題であると感じました。

 

講演の後半では、有志によって草原で国産在来種であるススキなどの種子を採取し、その種子で緑化することを目的に活動していることも報告されました。緑化活動も重要ですが、地域住民の理解と協力を得ることに時間をかけているという点が印象的でした。今後は、地域と企業が連携する産業によって地域性種苗による緑化が成立することが望ましいとのことですが、その規模については会場でも議論が交わされました。

 

今回の講演会を通じて、野の草花とそれに関連する文化的景観の重要性を再認識することができました。自然と共生する暮らしの魅力と、それを次世代に伝えていくための努力が求められていると感じました。

景観研究センター 大庭