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流域治水と雨庭

 景観セミナー / レクチャーシリーズ 2024 後期 #1

テーマ:流域治水の文化

1018日(金) 18:00-19:30


本日から、景観セミナーレクチャーシリーズの後期が始まりました。第1回目のレクチャーは、景観研究センターの代表である山下三平氏(九州産業大学 建築都市工学部 教授)が講演しました。

山下三平氏の講演「流域治水と雨庭」は、都市型水害という現代の課題に対し、雨庭という概念が提示する新たな方向性を示唆するものでした。教授は、都市化と集中豪雨が引き起こす水害の現状を提示し、これまでの治水対策が、総合治水や超過洪水対策を経て、現在では流域治水関連法に基づく多角的なアプローチへと変遷してきたことを詳述されました。

 

特に、流域治水が霞堤やため池、田んぼダムといった伝統的治水文化と共通の基盤を持つ点に、深く感銘を受けました。これこそが、自治や「小さき者」の営み、そして「自在の美」が息づく日本の風土と呼応するものではないか、と改めて考察する機会となりました。

 

雨庭は、都市に点在する小規模な空間でありながら、雨水処理機能を担い、地域の「まちニハ」としての役割も果たします。講演では、京都の相国寺裏方丈庭園が長きにわたり水害を防いできた事例を挙げ、その枯山水が実は高度な雨水管理機能を持つ「伝統的雨庭」であったという研究結果は、非常に興味深く、私たちに古の知恵を現代に活かす可能性を示唆してくださいました。

 

また、九州産業大学キャンパス内に設置された雨庭「CELL」での実践は、植栽による浸透機能の向上や、手入れがもたらす喜びといった、「都市生活のリアリティ」を引き出す体験の重要性を物語っていると感じました。これは、単に治水という機能を超え、人々の生活の質を高めるグリーンインフラとしての雨庭の価値を再認識させてくれるものでした。山下先生、誠にありがとうございました。

 

文責:大庭