2025年6月20日(金)、九州産業大学23号館にて、景観研究センター主催による「景観セミナー」が開催されました。2025年 前期の景観セミナーでは、「縮退社会における空間と価値の再創造」を総合テーマとしており、第二回目は、神山藍氏(東洋大学 准教授)をお招きし、「『用と美の風景』と限界風景論」と題してご講演いただきました。
神山先生は、鶴見俊輔の「限界芸術論」は「風景」にも当てはまるとご提案されており、特別な風景(純粋風景)に目を向けるだけでなく、生活に根ざした身近なもの(限界風景:用と美の境界)にも目を向けることで、新しい景観研究の可能性が広がることをご説明いただきました。
具体例として、「茶の湯」を挙げられていました。薬用として始まったお茶が、文化や芸術に発展しており、わびの精神が限界芸術的な価値を持つと紹介されました。また、「ローマの噴水」も具体例として挙げられており、芸術的な装飾で知られているが、本来は市民に飲料水を提供するために作られた生活基盤であり、芸術性と実用性の両立が人々に愛される理由であると紹介されました。その他、「土佐日記」、「大伴家持」なども例として挙げられました。
「限界芸術」、「限界風景」などは普段考えることのなかった概念だったため、最初は理解が難しかった中、具体例を交えたご説明を聞くうちに会場の参加者の理解も進みました。今回のご講演は、芸術や風景の見方について、改めて考えさせられる機会となりました。
景観研究センター 古野